【体験談】場面緘黙 (ばめんかんもく)

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場面緘黙(ばめんかんもく)とは

皆さんは、「場面緘黙(ばめんかんもく)」という言葉を聞いたことがありますか?

普段は話すことができるのに、学校や保育園などの特定の場面で、声を出したり、話したりできない状態が続いていることを言います。

わざと話さないのではなく、緊張や不安などから話すことができなくなってしまうのです。

生まれつきの気質などに加え、環境の変化などが複数影響して発症するようですが、はっきりとした原因は、まだわかっていないことも多いようです。

今回は、そんな場面緘黙の当事者である、けいこさんの子どもの頃の体験談になります。

ぜひ「場面緘黙」について知っていただきたいです。 

声が出ない

「あの子は泳げないだけだもんなぁ。
私は自転車にも乗れないし、泳げないし、何より学校で友だちと話すこともできない…。

そんなことを思いながら、スイミングスクールで仲良くなった子が、自転車で帰っていく姿をぼんやり眺めていた小学3年生の夏。

今でもよく覚えています。

私は小学2年生の2学期から、学校で全く声が出せなくなりました。

それまでも引っ込み思案ではありましたが、普通に授業に参加していましたし、学芸会でもセリフはありました。

なぜ声が出せないのか、どうすれば話せるようになるのか、これは一体何なのか、独りでぐるぐる悩んでいました。

声を出そうとしても、喉の奥がキュッとなって、どうしても声が出せないのです。

親にも相談できませんでした。

なので親は、担任の先生に私が学校で話していないと聞くまで、数ヶ月気付いていなかったようです。

防衛反応

のちにこれが『場面緘黙(ばめんかんもく)』というものだと判明しますが、それはずっと後のこと。

場面緘黙とは、ある特定の場面(学校など)で話せなくなる症状で、家では普通に話しているので家族は気付きにくいのです。小学校低学年までに発症することが多いようです。

私の場合、家から一歩外に出るとそれが始まり、家に帰るまで続いていました。


一日中緊張しっぱなしで黙っているので、帰宅すると一気に喋りまくります。

厄介なことに、ただ話せないだけでなく、咳ができない、くしゃみができない、鼻をかめない(すすれない)など、とにかく自分の体から音を出すことができないのです。

また、椅子を引く、何かを引きずるといった自分の行動によって音が出ることもダメでした。

これは大人になってもダメで、例えば、スーツケースを引っぱる時のタイヤの音が無理で、大きな音が出てしまう舗装されていない道などは、持ち上げて歩いてしまいます。

目覚まし時計の音、電子レンジの出来上がり音、機械のエラー音なども苦手です。

とにかく注目を浴びることが怖いのと、大きい音を立てると周りに迷惑になるのではという想いが強いため、足音も立てず忍びのような生活をしています。

喋らない、音を立てない、というのは「恐怖から自分を守る手段」なのだと思います。

喋れない学校生活で感じたこと

喋れないと不都合がたくさんあります。その中でもこれは困ったなぁ、という体験を一つご紹介します。

私の通っていた小学校には『仲良し班』というものがありました。

1年生から6年生までの縦割り班で、遠足へ行ったり色々な活動をするのです。

自分のクラスにいる時は、先生もクラスメイトも、私が喋れない子だという認識があるので、比較的楽でした。(今思うと、こんな私にみんな優しかったなぁと改めて感じます。)

しかし他学年が混在すると状況は一変!担当する先生も変わるため、私の事を知る人が少なく、とても不安で何かしら問題が起こりました。

一番困ったのが、順番に話さなければいけないゲームをする時でした。

私が何も言わないので、うちの班だけ何度も最初の人からやり直しになりました。

先生に「じゃあ、もう一回最初から!」と言われ続け、とうとう時間がきてしまいました。

先生は何も言わない私を、不思議そうに見ていました。

この経験から感じたことは、クラス内、学年内はもちろん、学校全体でも生徒の情報を共有(その子の得意不得意、絶対ダメなことなど)し、学校全体で生徒を見守っていけたらいいのになぁという事でした。

そしてみんなが同じに何でもできる訳ではないということを知っていただき、できない子にも劣等感をいだかせないような工夫を、みんなで考えられる世の中になることを願っています。

知ってほしい

現在の私はというと、大人になってからも緊張しやすい性質は相変わらずで、つまずくことも多いですが、生活に支障のない程度には話すことができるようになりました。

場面緘黙という言葉を知ったのは、成人してからです。親に聞いて知りましたが、正直もっと早く知りたかったです。

早期に適切な治療を受ければ、症状が改善することがあります。

しかし私のように、大人になるまで何か分からずに悩んで、症状がなかなか改善しない人も多いようです。

発症率は、ざっくり言うと小学校に1、2人はいる計算になるそうです。

そういえばクラスに全く話さない子がいたな~、という方もいるかと思います。

その割には、場面緘黙は知名度がなく、その事が治療を遅らせてしまう原因となっています。

話さないだけで授業の邪魔になるわけではないので、先生も「そのうち話すだろう」と放っておくケースもよく耳にします。

本来発話ができる子が、2週間一言も言葉を発しなければ何かあるかもと思ってください。

誰かが「あの子もしかして場面緘黙じゃない?」と気付けたら、たくさんの子が早期治療を受けられ、症状が改善するかもしれませんので、是非この機会に『場面緘黙』という言葉を、覚えていただけたら嬉しいです。

また場面緘黙の理解促進のために活動をしている『かんもくネット』という団体があります。

こちらのWebサイトでは、場面緘黙を周囲の方に理解してもらうためのパンフレットもダウンロードできますので、ぜひご利用ください。

この記事を書いた人
けいこ

旦那、母、老猫と暮らしています。
動物とかわいいものとしょっぱいものが好きです。

場面緘黙の体験談ブログを書いています。
よろしければのぞいてみてください♪

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