パラリンアーティスト大橋美沙さん『移動式MISA美術館』相模原市内の小学校にて開催 

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移動式MISA美術館

相模原市緑区在住のパラリンアーティスト、大橋美沙さんの絵画作品が、『移動式MISA美術館』(MISA展)として、市内の小学校を巡回して展示されています。

今回は大橋美沙さんのお母さまである、大橋美穂さんに作品の紹介と、これまでの子育てのお話をお伺いしてきました。

移動式MISA美術館について

大橋美沙さんの大学の卒業制作「ギフト。」(横浜美術大学・優秀賞受賞)とお母さまの美穂さん

今回お伺いした会場は千木良小学校内の1室。

広い部屋の中に、大小様々な美沙さんの作品が飾られており、一般公開もされていました。(現在千木良小学校での展示は終了しています。現在の展示場所は今後の予定をご覧ください。)

部屋に入り、まず飛び込んできたのは、美沙さんの卒業制作である幅5m以上もある「ギフト。」

これほどの大きな作品ですが、1枚の中にたくさんのストーリーが描かれており、鑑賞していた人たちからは「すごい迫力」「細部まで描き込まれていて何時間でも見ていられそう」「どこに何が描かれているか探すのが楽しい」といった声が、次々とあがっていました。

美沙さんのこれまでのたくさんの作品

また子どもたちも、休み時間などに訪れ、作品の細部まで鑑賞し、色々な発見をして楽しんでいるとのことでした。私たちが取材に訪れた際も子どもたちが鑑賞しにきていました。

言葉だけでは表現しきれない、美沙さんが見ている様々な物や、感じ方が溢れ出てくるようなパワーのある作品がたくさんありました。

各作品にはタイトルと美沙さんの作品への想いが綴られている
実際に絵を描いている様子の動画も。マネをして描いているお子さんもいるとのこと
大橋美沙さんプロフィール
  • 相模原市緑区在住(2000年生まれ)
  • 広田小学校→相模丘中学校(中学から支援級に移籍)→星槎国際高等学校(通信制)→横浜美術大学(AO入試にて合格)
  • 学習障害(読む・書く・計算するなど、特定の分野に困難が生じる発達障害)があり、小学4年生から療育に通う
  • 高校2年生の時に美術の課題で、自身の小学生の頃の体験をもとに描いた絵本『かなわね』を制作
  • 発達障害の理解に向けて、母による自費出版にて絵本『かなわね』を刊行
  • 2022年 パラリンアート世界大会(障がい者アートのワールドカップ)で準グランプリ受賞
  • 現在は町田市、横浜市の絵画教室講師として勤務

プロジェクト実施の経緯

このMISA展は、美沙さんの小学校時代の恩師で、現・津久井中央小学校校長の神原由香里先生が中心となって企画されました。

作品保護用のダンボールの額縁や、学校を巡回するための運搬費用は、クラウドファンディングによって支援されました。(クラウドファンディングは現在は終了しています)

プロジェクト詳細や経緯などは、以下リンクよりご覧いただけます。

移動式MISA美術館 今後の予定

2023年12月~2024年3月中旬までの予定

  • 12/23〜1/8  立川 昭和記念公園花みどり文化センターにて「ギフト。」の展示
  • 1/9〜1/19  相模原市立若草小学校
  • 1/19~1/29 八王子市立片倉台小学校
  • 1/29~1/31 相模原市立中野小学校
  • 1/31~2/5  相模原市立湘南小学校
  • 2/5~2/15  相模原市立桂北小学校
  • 2/15~2/18 城山 もみじホール
  • 2/19~2/29  相模原市立大野北小学校
  • 2/29~3/15  相模原市立もえぎ台小学校

※小学校への見学は、一般開放されているかを、事前に各小学校にお問合せください。

絵本『かなわね』につい

「かなわね」作・絵:大橋美沙 文芸社

美沙さんが高校の美術の課題で制作した絵本で、大学在籍中にお母さまの美穂さんが自費出版されました(文芸社)。

美沙さん自身を主人公の女の子「かなちゃん」に見立てて描かれています。

いくら頑張っても頑張っても、自分だけみんなと同じようにできない…。学校生活でも人間関係でも、様々な経験をしてきた美沙さんの思いが詰まっています。

学習障害・発達障害のあるお子さんにとって、世界はどのように見え、どのように感じているのか?その一端を知ることができる、当事者による貴重な絵本となっています。

なお、こちらの絵本は相模原市内の小学校に寄贈されているとのことですので、ぜひお手に取ってみてください。

またAmazonからも購入することができます。

インタビュー】お母さまの大橋美穂さんにお話を伺いました

みかた編集部

移動式MISA美術館は、美沙さんの小学校時代の先生が発案してくださったとのことですが・・

美穂さん

美沙が小学2年生の時の担任・神原先生が企画してくださったんだよね。

当時娘が学校で、国語と掛け算でつまずいたり、授業中ぼーっとしているなどの様子に気付き、私に話してくださったのも、神原先生で。

当時はまだ発達障害の認知もなかった時代。私と先生で「何だろうね・・」と考えていたけれど、当時はよくわからなかった。

その後、美沙が高校2年になって、授業で描いた絵本を私に見せてくれた時に、こんな世界だったんだっていうことがわかって。

それが「かなわね」なんだけど、この絵本を神原先生にも見てほしいと思って連絡を取ったりしていた。

それから美沙の描いた絵も見てもらうようになって。それで先生から「この絵をたくさんの人に見てもらおう」という話をいただいて、今回の企画になった。

みかた編集部

神原先生との出会いが長い時間を経て、今回の企画につながっているのは運命的な出会いですね。

美沙さんの絵にはとてもたくさんの描写がありますが、どういった感じで描かれているのでしょうか?

美穂さん

美沙の頭の中に出てきたイメージを、そのまま描いている感じなのかな。美沙の絵は自分を追求したような作品が多い。

あと美沙の絵にはよく耳が描かれてるんだけど、それも本人の音への過敏さなんかが関係してるのかなって。音がすごく大きく聞こえるから、大きい耳がたくさん出てくる。

それと美沙は話すということが得意ではなかったんだけど、絵で表現できるようになって、そこから話すという表現が広がっていった気がする。

みかた編集部

美沙さんの頭の中の、こんがらがった様子を表現した作品もありますね。

こう見えている、感じているというのがそのまま表現されているものもあるんですね。

今日取材に来ているのが、みんな子育て中のママなのですが。美沙さんの学校生活は、どのような感じだったのか教えてもらえますか?

美穂さん

小学校は通常級にいたんだけれど、やっぱり勉強についていくのが大変で。

それで中学校に入る時に、本人の希望で支援級に入った。そうすると成績に左右されなくなり、親子ともに気持ちが楽になったかな。

その後、通信制の高校に行って大学に進学した。小学校~大学と、すべて楽に過ごせる場ではなかったけれど、でもきっと学校がなかったらこの絵(「ギフト。」)はなかったと思うんだよね。

みかた編集部

「ギフト。」の作品説明にも “本当にいいものも やっかいなものも 私にとっては 全て神様からの贈り物” とありますね。

学校で楽しいことも辛いことも含めて色々な経験をしたことが、この作品につながっているのですね。

これまで親子で色々なことがあったと思いますが、お子さんとの向き合い方を教えてください。

美穂さん

ハンデを持っていると家や学校でも色々ある。失敗や親子でぶつかったこともたくさんあった。

娘が心を痛めている時に、それをまずは「痛かったね」と受け止める

娘のそういう姿を見るのは親にとっては本当にしんどいことだけど、その子が感じていることだから。そこは全肯定することが大切なのかなって。

子供の人生もOK、自分の人生もOK。子供が成長しながら自分(親)も成長していくんだよね。

葛藤こそが子育ての醍醐味だよなと今は思える。

娘の良い所はとにかく「いいね、いいね!」と言う、プロの親バカになろうと思ってる(笑)

みかた編集部

葛藤こそが子育ての醍醐味・・今自分もまさに子どもたちの姿に葛藤する気持ちがあったりします。

今日美穂さんのお話を聞いて、その葛藤もOKなんだなと思えました。

本日は素敵なお話をありがとうございました。

美沙さんの作品の中で聞く、美穂さんのお話は、これまでの子育ての気持ちと、娘さんへの愛情にあふれていて、どれも心に響いてくるお話でした。

今後、美穂さんが子育てなどのお話をする機会も作っていきたいとおっしゃっていましたので、機会がありましたら、ぜひ足を運んでみてください。

この記事を書いた人
みかた編集部

ぴあっと発達情報サイトみかた編集部。
みかたはNPO法人ぴあっとが運営している「相模原×こどもの発達支援情報サイト」です。
“こどもの発達のみかたをふやす”をモットーに、企画を考え、取材したり、編集したりしています。

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