【作業療法士さんが解説】療育に関わる専門家「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士ってどんなことをしているの?」
ぴあっと会員の作業療法士キャリーです。普段総合病院でお子さんのリハビリにも携わっています。
発達がゆっくりなお子さんや凹凸のあるお子さんは、手先が不器用なことが多く、日常生活や学校生活でのお困りごとについて相談されることがよくあります。
ここでは作業療法士としての知識と経験から、皆さんにお役立ち情報をお伝えできればと思います。
今回は、療育に関わるリハビリの専門家である、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士について、紹介したいと思います。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を一言で説明すると
理学療法士(PT:physical Therapist)は、「動作」の専門家
作業療法士(OT:Occupational Therapist)は、「作業」の専門家
言語聴覚士(ST:Speech Therapist)は、「コミュニケーション」と「摂食・嚥下」の専門家
理学療法士(PT)は、「動作」の専門家です。寝返る、起き上がる、立ち上がる、歩くなどの日常生活を行う上で基本となる動作の改善を目指します。
言語聴覚士(ST)は、「コミュニケーション」と「摂食・嚥下」の専門家です。コミュニケーションには言語、聴覚、発声・音声、認知などの各機能が関係しており、これらを専門的に評価し支援します。またごはんを食べる・水を飲むなど、摂食・嚥下にも対応します。
私キャリーは作業療法士です。 作業療法(OT)は、「作業」の専門家です。
えっ?作業?農作業や事務作業?じゃあ私には関係ない???・・・そんなことはありません!!!
作業療法の「作業」とは、生活に関わる活動すべてのことです。
食べたり、着替えたり、トイレに行ったり、仕事をしたり、遊んだり、勉強したり、買い物をしたり、料理をしたり、、、人の日常生活に関わるすべての活動のことを言います。
障がいがある人、病気やけがなどによって、「作業」が難しくなっている人を対象に、こころとからだの両方にアプローチして、今ある能力を生かして生活しやすいようにすること、悪くならないように今の状態を保つこと、その手段として「作業」を行うこと、それが作業療法です。
自分らしさを取り戻すこと、見つけるための、こころとからだのリハビリテーションです。
PT・OT・STはどこにいるか
病院やクリニックなど「医療」の場、児童発達支援センターや放課後等デイサービス、就労移行支援事業所など「福祉」の場、特別支援学校や教育委員会など「教育」の場、介護老人保健施設など「介護」の場、その他にも様々な領域に所属しています。
また相模原市では、各区の子育て支援センターの療育相談班や、支援者向けに講習や研修などを行っている陽光園などに在籍しています。
もちろん、どこの施設にも必ずいる、というわけではありませんし、PTやOTに比べてSTは数がかなり少なく、支援を受けられる場所も限られているのが実情です。
リハビリを受けるにはどうしたらいいか
病院など医療の場でリハビリ(PT・OT・ST)を受ける場合は、医師の診察や診断が必要になります。
発達期での主なリハビリの対象は、脳性麻痺、ダウン症候群などの先天性疾患、筋ジストロフィー、脳炎・脳症や頭部外傷の後遺症、呼吸器疾患、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、学習障害、などです。
はっきりとした診断がついていない場合は、まずは病院を受診し、医師に相談してみることをお勧めします。
診断をつけることのメリットは、病気や障がいについて知ることで、適切な治療や支援につなげることができることです。
福祉や教育の場では、診断名がなくても支援が受けられることがあります。
相模原市の場合は、中学生までは各区に設置されている子育て支援センターの療育相談班に、高校生以上は発達障害支援センターにまずは相談してみるといいかもしれません。
お子さんのリハビリの実際
お子さんのリハビリで扱う作業は「遊び」と「学び」の領域が中心になります。
からだを動かすこと、周りで起きていることを理解すること、道具をうまく使うこと、自分の気持ちを表現すること、友達と協力することなど、子ども一人ひとりの状態に合わせた活動でアプローチし、成功体験を積み重ね、発達を促します。
そこにはPT・OT・STが協力して支援にあたることが理想的です。
例えば、学校の授業中、椅子に座っていられずに教室を歩き回ってしまうお子さんへの対応を例として見ていきます。
PTは、「体幹が弱く、座っていることが難しいのかな?」という視点から、姿勢や体幹機能を評価し、必要な運動を実施したり、お子さんが座りやすい椅子を提案するかもしれません。
OTは、「鉛筆や消しゴムなどの道具の操作が難しくて嫌になってしまうのかな?注意力が続かず飽きてしまうのかな?」という視点から、学習に必要な視線や手先の動き、道具の操作、感覚の過敏さや注意力などを評価し、必要な練習をしたり、使いやすい道具の提案や注意が持続しやすい環境の調整などを提案するかもしれません。
STは、「先生の指示がよくわからないのかな?」という視点から、聴覚や言語能力、知能などを評価し、適切な言葉かけの方法や課題の難易度調整を提案するかもしれません。
このようにそれぞれの職種が専門性を発揮し、役割を分担しながら支援にあたっています。
しかしこれは理想の形であり、実際には発達領域で働くPT・OT・STの数は限られており、PTしかいない、STがいない、などということも多々あります。
その場合、それぞれの職種がその専門性にとどまらず、お子さんに必要なこと、そして自分たちにできることを精一杯提供しています。
まとめ
お子さんでも大人でも、障がいがあってもなくても、同じ人は1人もいません。
どんなことができるようになりたいか、できる必要があるか、何が期待されているかは一人ひとり違います。
その人が、その人らしく、健康や幸福を感じられることを目指して、一人ひとりに寄り添ってリハビリテーションのプログラムは作られます。
お困りごとがあれば、まずはお気軽にリハビリ専門職にご相談くださいね。
現役の作業療法士で、2児の母。
総合病院でお子さんのリハビリに携わっている。
最近体力の衰えをヒシヒシと感じている。
趣味はもの作り全般で、仕事にも活かされている。