【発達障害や知的障害のある子の歯医者さん事情】保護者の体験談から
皆さんこんにちは。ぴあっとをはじめた人まいこです。
皆さんのお子さんは歯医者さんには通っていますか?
発達障害や知的障害を持つお子さんにとって、歯医者さんへ通うというのはとてもハードルが高いという話をよく耳にします。
こちらの記事では、保護者の方の歯医者さんでの体験談や、うちの息子の歯医者さんでの様子をご紹介します。
歯医者さんはなぜハードルが高いの?
相模原市で過去に実施した健康に関するアンケート調査で、障がいのあるお子さんのかかりつけ歯科医を持っている割合が低いという結果がでたそうです。
周りのご家族からもよく「歯医者さんに通うハードルが高い」と聞きますが、それはどういった理由からなのでしょうか。
以前にNPO法人ぴあっとが運営している発達支援のコミュニティ「チームぴあっと」の皆さんに、歯医者さんに通った体験談やご意見を伺いました。その中で聞かれた声の中に
- 普段の子どもの様子から、大変なことになりそうだと想像して、行くのを躊躇してしまう
- 事前情報が少ないため、通院に不安がある
といった通うにあたっての精神的なハードルと
- 検診時に歯医者さんから色々言われて、その後行けなくなってしまった
- 初めての場所、見慣れない道具、治療の機械音、匂いなどと苦手な要素が多い
といった、実際に通ってみたが大変だったり、嫌な経験をして、その後行けなくなってしまうケースなども聞かれました。
発達特性のあるお子さんの中には、初めての場所への不安が強かったり、感覚過敏などにより歯医者さんの独特の匂いや、治療音などで、歯医者さんの空間自体に抵抗のある子も多いようです。
また病院全体に言えますが、限られたスペースで待つことが難しかったり、周りの目が気になってしまって通いづらいという声も聞きます。
次に、より具体的なエピソードを見ていきましょう。
保護者の方から寄せられた歯医者さんのエピソード
チームぴあっとの皆さんから寄せられた、歯医者さんのエピソードをご紹介します。
【歯医者さん】大変だったエピソード
- 聴覚過敏があり、歯医者さんの歯を削る音などが嫌で、待合室にも入れませんでした。
- 初めて見る機械や器具が怖くて、診察室に入れませんでした。
- 強引にフッ素塗りをしていることがあり、子どもにとっても苦痛の場になってきているように思え、通院を辞めてしまいました。
- 検診時にイスに座る、倒れるイスが怖い、寝っ転がって検査することに抵抗があります。
- 歯医者さんから「普通こんなに嫌がらないんですけどね。このままだとうちでは診れなくなります」と言われて、私が嫌になり通うのをやめてしまいました。
- 歯医者さん2か所に通い、最初に通った所は先生は優しかったけど、部屋が怖かったと言っていました。
- 歯科検診で先生の指を食いちぎりそうになったトラウマ経験しかないです。
- 言葉でのコミュニケーションが難しかったので「口を開けて」と言われても開けず、診察できず、「本人と言葉などで交渉ができるようになったら再チャレンジしましょう」ということになり、それ以来行けませんでした。
これらのエピソードは、他のご家族からもよくお聞きする内容で、たくさんのお子さんやご家族が歯医者さんへ行くことにハードルを抱えていることがわかります。
【歯医者さん】よかったエピソード
- 歯科の機械音が嫌かなとイヤーマフ着用で行ったことで、クリニックの方にも息子の様子を、前もって分かっていただけたのでお互い助かりました。
- その時の子どもの状態によって行けるか、当日までわからないため、予約不要の歯科医院に通い始めました。突然でも診療してもらえるので助かっています。
- 最初から検査できるとは思っていなくて、初回は医院の中に入れたらオッケーくらいに考えています。
- 虫歯ができた後の治療のことを考えたら、音も匂いも恐怖もあり、口を開けてくれないのではと思ったので、虫歯ゼロを目指して検診に通いました。
- 言葉での理解が難しい子のために、絵カードで手順を説明してくださったり、初めて見る器具が苦手と伝えると、極力目に入る場所から隠してくださったりしました。
うちの子の場合は診察台のライトをつけられるようになるまで1年ほどかかったのですが、慣れるまでスモールステップで根気よく付き合ってくださいました。
【歯医者さん】こうなったらいいな
- 歯科医院の中に別室やパーテーションなどがあると、親も周りの目を気にせず、子どもに寄り添いながら長く通えるのではないかと思います。
- 息子の障害をオープンにして、息子がもっと小さくて何も分からないうちから、歯医者さんに慣らしておけば良かったと思います(椅子に寝るだけとかでも)。
- 必要になった時に初めて行くのではなく、定期的に検診を兼ねて受診しておき、場所や環境に慣れさせておくのが良いと思います。
- 歯医者さんがどういうところなのか知るため、徐々に慣らすためのステップがあると嬉しいです。先生に会って触れ合ってみる、席に座ってみる、器具を知る、自分の歯を鏡に写して見てみる、など。
- 個室で対応してくださる歯医者さんが増えたらありがたいなあと思います。
歯医者さんに慣れさせるための、時間や場所、機会があったら助かるという声が多く聞かれました。
かかりつけの歯医者さんでの様子
さて、ここまでチームぴあっとの保護者の方の声を見てきましたが、うちの息子の歯医者さんでの体験をご紹介します。
うちの息子は現在、特別支援学校の小学3年生で、知的障害(最重度)と自閉症の診断を受けています。
歯医者さんに通い始めたのは年中さんくらいだったと記憶しています。
やはり虫歯の治療を受けられる気がしなかったので、検診で虫歯にならないようにしたいと思い通い始めました。
元々自分のかかりつけ歯科医で、お子さんの預かりや子育て支援なども行っているような歯医者さんだったので、息子の障害のことも最初に伝えて通い始めました。
息子のようなお子さんも通っているそうで、「時間がかかるかもしれませんが、少しずつやっていきましょう」と声をかけてくれたので、安心して通うことができました。
また基本的には個室で対応してくれるのも助かりました。
一番最初の受診時には、写真カードを用意してくれていました。
何度か通うと、ここではこういうことをやるんだというのは理解したようでした。
息子は部屋や物を確認したい派なので、器具など気になっているようですが、(あわよくば触ってやろうというのは未だにあります…)大丈夫なものは触らせてくれたり、声かけでなんとかなっています。
そしてやはり倒れるイスが怖いらしく、しばらくはイスに座ったまま見てもらっていました。
首につける紙ナプキンも難しいのでつけていません。
幼児期は慣れさせるために、1ヵ月に1度通わせてもらいました。10分ほどの短い時間でさっと終わらせてくれていたので、通う際もそれほど負担なく通い続けられました。
それから徐々に倒れるイスに挑戦し、頭をつけてみる、一瞬寝っ転がる、寝っ転がって歯を磨くなどとスモールステップで進めていただきました。
通い始めて4,5年ほど経ちましたが、最近は寝っ転がっての歯磨きやフロス、フッ素塗布もなんとかできるようになってきました。
未だに歯ブラシをガジガジに噛んでしまったり、少しやったら起き上がって立ち歩いたり、休憩したりしながらですが、受診しています。
先生が、終始ほめてくれたり、10数えてくれたり、鏡や歯ブラシを息子用に持たせてくれたりと、工夫しながら進めてくださっています。本当にありがたいです。
おわりに
今回は、発達障害や知的障害のある子の歯医者さん事情として、保護者の体験談をお届けしました。
障がいのあるお子さんが、スモールステップで取り組んでいけるように、歯医者さんの環境に慣れる機会や取組みがあったらいいなと思います。
また障がいがあっても通い続けられるような歯医者さんが、地域に増えてくれることを願っています。
次回の記事では、相模原市の健康増進課で進めてくださっている歯科の取組みについてご紹介していきます。
ぴあっとをはじめた人。
小学3年生の息子、小学6年生の娘を持つ2児の母。息子は重度の知的障害があり、自閉症と診断されています。娘は感覚の過敏さや独特な感性を持っています。
そんな子どもたちとの日々の生活で感じたことや、出来事を発信していきます。